月の華
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月華が生まれて六度めの秋が過ぎ、冬がやってきた。
真っ白な雪が地上を覆い、寒椿の鮮明な色を映し出す。
空には月が浮かび、高欄に座り込む私にも青白い光を落としていた。
静寂の美しい世界。
息苦しさに目覚め、一人部屋を抜け出した。
止まらない咳で月華の眠りを妨げたくなかった。
小さな寝息を立てて眠っている姿は、私に安らぎを与えてくれる。
少しずつ成長する姿を、いつまでも見ていることが出来たらどんなに嬉しいか。
私にはその時間がない。
忍び寄る死の影。
重たくなっていく体。
止まらない咳。
下がらない体温。
すべてがもう長くないことを物語っている。
吐く息は白く、薄着のため冷たい風が体を冷やす。
やせ細ったこの体に、あとどれくらいとどまっていられるのだろうか。
気力だけでは命の火を燃やし続けることは出来ない。
少しでも長く月華の傍に、少しでも長く月華を守りたい。
その思いだけで生きてきた。
生まれた時、天命を受けてしまった神の子に、死に行く私がしてあげることなど何もない。
ひとつあるとすれば、幸せを願うこと。
たとえすべてに逆らうことになったとしても、自分の幸せをつかんで欲しい。
それが帝に逆らう願いでも、罪を背負う願いでも、私はかまわない。
娘の幸せ以上に望むものなどなにもない。
私のこの身が闇に囚われたとしても、私は月華の幸せを願うだろう。
この命が果て、この体が朽ち、すべてが消え去っても。
月華が生き続ける限り……。
月華、幸せになるんだよ。
自分を本当に愛してくれる人と、共に幸せをつかむんだ。
私は信じている。
月華がつかむ未来が、幸せに満ちた美しい世界だと……私は信じている。
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※平安と設置していますが、細かな設定等は時代に準じたものになっておりません。平安時代に詳しい方には見苦しいものになっているかと思いますが、月城の作った過去の世界と思って読んでくださると嬉しく思います。平安時代風ファンタジーということでお願いします。
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