王は水に眠る

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深い深い水の底
きらきら光る木漏れ日を受け
静かに眠る

耳に届くのは
風の音?
争いの声?

目に見えるのは
聳え立つ聖なる木?
穢れた血?

口元にうつるのは
喜び?
悲しみ?

吐き出す息の変わりに地上に届くのは
優しい歌?
切ない涙?

目覚めの日を信じ
信じた人を信じ
眠り続ける

時は必ず来る……と。

裏切りと言う言葉を知らない
美しい心の精霊は
疑いの心を持っていなかった

緩やかに揺れる水に抱かれ
時が来るのを待ち続ける

眠る

精霊は水に眠る

眠る

王は水に眠る

時にそれが永遠となるとも知らず
穏やかな微笑を絶やさぬまま
眠り続ける……。

人は時に残酷で
王を捨てる
人の裏切りに
眠りから覚めぬまま
王は消える
眠り続けた肉体は
水の泡になる

その時王がこぼすのは
裏切りへの呪いの言葉?
悲しい微笑の涙?

見ることの出来ない水底
語ることのない聖なる木
語る代わりに木は叫ぶ
王の死を悲しみ
幹を揺らす
激しい風は死の風となり
人間の元に届くだろう

風は止まらない
激しさを失っても
風は人に罪を運んでいく
止めることの出来ない呪いの歌のように
人の耳に届く

肉体を失っても王は水に眠る
彼の許しが出るその時がくるまで
呪いの歌はやむことはない

王は永遠に眠り続けるだろう
人に罪をかせるために……。

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